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AEDが記録した「突然死の瞬間」— 山口先生の論文が国際学術誌に掲載されました

当院で土曜日の外来を担当いただいている山口先生(佐賀大学医学部 循環器内科)が責任著者を務めた論文が、日本不整脈心電学会の英文誌 Journal of Arrhythmia(2026年)に掲載されましたのでご報告いたします。

どのような症例か

工場で夜勤中だった38歳の男性が、休憩で椅子に座った直後に突然倒れ、心停止となりました。その場に居合わせた方がただちに心臓マッサージを開始し、AED(自動体外式除細動器)が4回の電気ショックを行ったことで心拍が再開。搬送先の病院で治療を受け、後遺症なく第9病日に退院されました。

AEDの記録から分かったこと

注目すべきは、AED本体に残されていた心電図の記録です。心臓マッサージによるノイズが重なっていたため、そのままでは判読が困難でしたが、研究チームは波形を数値化し、ノイズ成分を差し引く解析を行いました。

その結果、この方の心停止が「心房細動」から「心室細動」へと移行した瞬間が、リアルタイムに記録されていたことが明らかになりました。この移行が実際の記録として捉えられることは極めて稀で、教育的価値の高い症例です。

背景にあった「WPW症候群」

この患者さんには、生まれつき心房と心室をつなぐ余分な電気の通り道(副伝導路)があるWPW症候群が隠れていました。これまで一度も指摘されたことはなく、この出来事で初めて診断されています。

通常、心房細動が起きても心室への信号は房室結節でほどよく制限されます。しかしWPW症候群では、この余分な通り道を通って極端に速い信号が心室に伝わり、心室細動=突然死に至ることがあります。この方の副伝導路は電気を通す間隔が220ミリ秒と非常に短く、危険度の高いタイプでした。

カテーテルアブレーションによる根治

後日行われたカテーテルアブレーション治療により、この余分な通り道は完全に遮断されました。治療後の心電図では、WPW症候群に特徴的な波形(デルタ波)も消失しています。原因が取り除かれたため、植込み型除細動器は不要と判断されました。

この症例が伝えていること
  • 迅速な心肺蘇生とAEDが命を救う — 居合わせた方の初期対応と早期のAED使用が、後遺症のない回復につながりました
  • 原因が特定できれば根治できる不整脈がある — WPW症候群はカテーテル治療によって治すことが可能です
  • 無症状でも隠れていることがある — 健診の心電図での指摘や、若い方の動悸・失神は軽視できません
当院での不整脈診療について

鶴田内科では、循環器・不整脈を専門とする医師が診療にあたっております。動悸、脈の乱れ、めまい、失神、健診での心電図異常の指摘など、気になる症状がございましたらご相談ください。必要に応じて専門的な検査や、高次医療機関へのご紹介も行っております。


掲載論文
Nakayama M, Shinzato K, Norita Y, Edayoshi M, Yamaguchi T. “Pre-Excited Atrial Fibrillation Degenerating Into Ventricular Fibrillation Captured by an Automated External Defibrillator.” Journal of Arrhythmia. 2026;42:e70447.
https://doi.org/10.1002/joa3.70447